前回に続いて書きます。
「もう『上から見たい』なんて言わせない! 百舌鳥古墳群の楽しみ方」
今回からはちょっと凝った話です。
4:一重濠の前方後円墳に行け
先にもちょっと触れたが、
仁徳陵の濠は三重だ。なので外から見る場合、
まず木の茂った堤が二つあって、
その向こう側に墳丘が見え……いや、ほとんど見えない。
一周しても例の鍵穴状のかたちを実感することは難しい。
だから、きれいな墳丘が見たいなら、
一重濠の前方後円墳に行くことだ。
池の向こうにある墳丘をじっくり鑑賞できるから、
一周しても面白い。
仁徳陵から徒歩圏内で言うと
・いたすけ古墳
・御廟山古墳
あたりは非常に見やすくてオススメ。
仁徳陵をカットしてでも行ってほしい。
もう少し足を延ばして
・ニサンザイ古墳
も良い。墳丘が美しいことで有名だ。
履中天皇陵も一重濠で墳丘がきれいだが、
うまく全景を見られる場所が少ない。
反正天皇陵はもっと見づらくて、
そもそも周回できない。
あと、ここに挙げた一重濠の前方後円墳は、
住宅が隣接していたりしていて、実は一周できない。
それでも50%~70%くらいは濠の真横を歩けるので、
自転車でゆっくり周回するといい。
濠に沿って見て行くと、
円形、方形が組み合わさってできた
不思議な形――前方後円墳というものがよくわかる
角度によって見え方が変わる面白さを一度でも体験すれば、
もう「上から見たい」なんて思わなくなるだろう。
5:墳丘を見ろ
当然ながら墳丘は木が茂って、
今や森のようになっている。
だから見ても仕方ないかというと、
そんなこともない。
角度や日の差し方によっては、
墳丘が段になっていることが確認できる。
築造時、円筒埴輪が並んでいた段丘が
今でもはっきりわかるのだ。
もっとわかりやすいのは「造り出し」。
前方後円墳のくびれの部分が飛び出しているアレだ。
祭祀をした場所と言われている。
さらに見ておくといいのは、
濠に溜まった水を流す排水設備だ。
墳丘は濠を掘って出た土を盛っているわけで、
雨水を抜かないと築造できない。
だから古墳を一周するとだいたい
排出用の水路がある。
濠の水は農業溜池としても使われていたらしい。
一周するときは、
まず四角い部分から歩き出して(円の方でもいいけど)、
斜めのアングルで「ザ・前方後円墳」な眺めを満喫する。
そして真横で造り出しを確認し、ついでに水路もチェック。
こんな感じの”組み立て”を意識するといい。
6:墳丘に登れ
百舌鳥古墳群の前方後円墳は、
ほぼすべて天皇陵か陵墓参考地なので、
中に入ることができない。
登れる前方後円墳は日本各地にあるのに、
ここ百舌鳥で入れないというのは、
残念なことだ。
ちなみに登れる前方後円墳でオススメは
奈良の見瀬丸山古墳。
後円部の上段だけが陵墓参考地で他はフリー。
見てよし、登ってよしの超オススメ古墳なので、
ぜひ行ってみてください。
さて、前方後円墳は無理だけど百舌鳥古墳群でも、
円墳や方墳、ホタテ型には登れるものがいくつもある。
公園や駐車場なんかにある古墳は、
柵で囲まれてなければ、登ってOKだ。
こういう古墳もちゃんと堺市のガイドに載っている。
当然、夏はヤブ蚊だらけ。冬に行ったほうがいい。
オススメは御廟表塚古墳。
大仙公園の近くにある円墳型の展望台も、
もともとは古墳だったらしい。
では、円墳や方墳に登って何がおもしろいのか?
これはなかなか答えに困る質問だ。
外から見てもわからないけれど、
登ると人工物であることがわかる……ような気もする。
まあ、とにかく高いところに登るのは気が晴れるもの。
童心に戻って円墳をダッシュで駆け上がり、
てっぺんから街を見下ろそう。そして、
「これが頂点を極めた者の眺めか……」
と呟いてみよう。
たぶん豪族か重臣クラスだろうけど。